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アトピー性皮膚炎の全身療法 ~2.ホルモン剤の内服について~
寒い日が続きますね。
内科や小児科、耳鼻科などでは大混雑の毎日ですが、
冬の皮膚科は夏よりずっとすいています。
特に2月は底になります。
とはいえ、専門医ふたりで診察させていただいているせいでしょうか、
今年の冬は少し例年に比べて多めです。
乾燥肌、それに伴うかぶれ、しもやけ、帯状疱疹、水いぼなどなど。
特に夕方は混み合いますので、
早めにお越し下さい。
ホルモン剤の内服またはシクロスポリンの内服のススメ
前回はアトピー性皮膚炎の治療の基本になる外用療法、
紫外線を当てる「中波紫外線療法(ナローバンドUVB)」について
説明いたしました。
関連記事:アトピー性皮膚炎の全身療法 ~1.紫外線療法について~
「お薬を塗るのだけど、頑張って塗ってもこれ以上よくならない。
紫外線も当てたら良さそうなんだけど、
仕事が忙しくて、月に何度も通院できそうにない。」
そういう患者さんにはホルモン剤の内服、
またはシクロスポリンの内服を勧めています。
(もちろん、入院していただいて
みんなで手分けをして外用剤を1日3回塗れば、
まず確実に1週間できれいに治ってしまうのですが、
家庭で塗る場合には残念ながら限界があります。)
ホルモン剤の内服とは?
ホルモン剤の内服は、膠原病、薬疹の治療などでよく使われます。
体内で生産されている「副腎皮質ホルモン」を、
自前で生産する分の数倍の量で内服していきます。
すると、炎症を起こしている細胞を抑えることができるため、
湿疹が目に見えて減ります。
アトピー性皮膚炎では、膠原病などよりはずっと少ない量で
コントロールが可能です。
ホルモン剤の内服の最大の利点
この治療法の最大の利点は、「コストパフォーマンス」
それまでの塗り薬中心の治療+アルファの治療費で、
今までとは比べ物にならない症状の改善が見られます。
デメリットは、副作用の発現を未然に防ぐために、
治療する期間が比較的短期間に限られることです。
主な副作用として、胃粘膜の障害が挙げられます。
ですからホルモン剤の内服中は、胃が悪くならないように、
胃薬を内服してもらいます。
副作用はあるので皮膚科医の詳細な観察が必要
そのほか様々な副作用はありますが、
皮膚科専門医が皮疹の詳細な観察を行い、
全身に異常がないか確認しながら治療を進めてゆけば、
決して体に有害な治療ではありません。
ただし、急にやめると、抑えきっていない発疹が悪化したり、
自前の副腎皮質ホルモンが十分に出なかったり(副腎クリーゼ)するので、
必ず少しずつやめるように処方、説明します。
一言でまとめると、ホルモン剤の内服は、
「安上がりだが、副作用が起こらないように十分な注意が必要な治療法」
と言えるでしょう。
次回は同じような免疫の働きを抑える薬でありながら、
比較的長期に内服しても副作用発現の懸念が少ない、
「シクロスポリン内服」
についてご説明したいと思います。
関連記事:アトピー性皮膚炎の全身療法 ~3.シクロスポリン内服について~
付記)患者さんからお尋ねいただいたこと
「症状をただ抑えているだけじゃないですか、
もっと体質改善のような治療はできないのですか?」
と聞かれることもあります。
確かに、全身療法とは言っても結局、対症療法にしか過ぎません。
そう聞かれた時には、砂場で水を流した時の例えを
お話しすることにしています。
砂で堤防を作って上からバケツで水を注ぐと、
川のように流れてゆきます。
ところが、途中で堤防が決壊した時には、
また別の水路が形成されて、
本来の川の流れは途絶えてしまいます。
そんな時には、一旦新しい水路をせき止めてやると、
また本来の川床に流れが戻ってゆきます。
こじれてしまったアトピー性皮膚炎の患者さんは、
ちょうど堤防が決壊してしまった川のようなものです。
本来の皮膚のあるべき姿、皮疹のない状態を
すっかり忘れてしまっているのです。
そんなときは対症療法的に、とにかく一時的にでも、
皮疹のない状態を再現する必要があります。
そうしているうちに、患者さん自身が、
正常の体の働きを思い出してくれます。
そうなってしまえば、そんな強い治療は必要ありません。
皮疹が少し出たときに、わずかのお薬を塗る程度で、
ストレスのない生活を送ることができるようになります。
「体質改善」というよりは、「体質回帰」ですねw